ホシガラス、山に行く

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シラビソの生える高い山にホシガラスは住んでいる。ホシガラスは森作りの名人。ホシガラスのいるところには豊かな森ができる。木が1本増えるごとに、ホシガラスの身体には美しい白い星が増える。今日もホシガラスは森を作る。 むかし、ホシガラスは普通のカラスと同じ真黒な姿だった。山に住んでいるわけでもなかった。普通のカラスと同じように里の森に住んでいたのだが、ある秋の日に森のはずれの木に止まっていたときに夕日の輝く草原を歩くキツネの、その金色の毛並みとしっぽの先が白く光るのが心底きれいだと思った。 「キツネさん、あなたはなんて美しいのでしょう。」 そんな事を言われてキツネは悪い気はしなかった。 「おや、カラスさん。ありがとう。」 「私もあなたのように美しい色の羽があればいいのに。せめてこんな真黒な姿じゃなくて羽根の先っぽだけでも白かったらなあ。」 「それならあの白い山にいくといいですよ。いつも白いでしょ?実は私もあの山の白い色を分けてもらったんですよ。山の神様にお願いしましてね。」 キツネはカラスにそういった。もちろん、そんなことは口からでまかせだったが。 「本当ですか?それでそんなにしっぽの先が真っ白で美しいのですね。」 「そうですとも。あなたも山の神様にお願いしたらどうです?」 どうせあんな遠くの山までは行けないだろうと思って、キツネはホシガラスにそんなことを言った。しっぽを見せびらかすようにふさふさと振って。 「それはいいことを聞きました。キツネさん、ありがとう。」 ホシガラスはキツネの言葉を信じて山に向かって飛んでいった。 近くに見えるようで、山は遠かった。 ようやくふもとのシラビソの林にたどり着いたときは、すっかり疲れてしまっていた。 シラビソの林が終わると、山には大きな木の姿はなくなる。あるのはホシガラスがようやく隠れることができるくらいの茂みと、少しばかりの草の生えるところ。少し休もうと茂みのそばに下りようとしたとき、茂みの中から「助けて、助けて」という声が聞えた。
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