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「死にたくなかったら、ついてこい」
そういうと、白い鳥はさっさと歩き出した。
ホシガラスは凍えて冷えたからだを必死に起こして白い鳥の後についていった。
すぐそばの岩と岩の間の隙間に白い鳥は入っていったので、ホシガラスもそこにもぐりこんだ。入り口は狭かったが、中は思ったより広かった。白い羽や木の枝などが敷き詰められていて、居心地の良い場所で白い鳥はうずくまった。
「狭いが我慢してくれ。適当な場所に座ってくれてかまわない。」
「助けてくれてありがとう。」
ホシガラスは、白い羽がフワフワしている場所に身体を押し込んだ。寒さでしびれていた感覚が段々ともどってくるようだった。
「お前、この山の鳥じゃないだろ。どこから来たんだ」
ホシガラスは、この山の白い色を分けてもらいたくて里の森から来たことを話した。
「あの、あなたはライチョウさんですか?」
「ああ、ライチョウだ。」
「イワヒバリさんが白い鳥がいるって言ってました。ライチョウっていう鳥なんだと」
「まあ今夜はここにいろ。明日になったら帰れ。ここは里の鳥が来るようなところじゃない。」
「そ、そんな。せめて山の神様に会ってお願いさせてください。」
「お願いしても、ダメっていわれたらどうするんだ。」
「どうするって・・・」
ホシガラスは口ごもった。そんな事を考えてもいなかったからだ。
「神様にお願いしたからって、聞き届けてくれるとは限らないぞ。どっちかといったら、聞いてくれないことのほうが多いと思ったほうがいい。白い羽がほしかったら、俺の羽をやろうか。それをもって帰れ。」
ホシガラスは首を振った。
「そうか。まあいい。朝になるまで良く考えろよ。」
そういってライチョウは羽の間に首を突っ込んで寝てしまった。
朝が来た。
入り口は雪で埋まっていたが、ライチョウはかまわず頭を突っ込んで外に出た。山の下のほうに雲がずっと広がって、その向こう側から太陽が出てくるところを見るのが好きだったからだ。前に山の神様が「雲の海」と言っていたが、ライチョウは海を見たことがないので良くわからなかった。ただ、神様が「海というのは、こういう風にずっと向こうまで水が広がっている所だ」と教えてくれたが、やはりよくわからなかった。
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