2食目 靴

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これは、近所の靴屋に伝わるお話になります。 私の実家の近所には、一件の小さな靴屋があるのですが、その靴屋には昔からある噂がありました。 それは、その靴屋に一足だけ置いてある白いパンプスを絶対に買ってはいけないという噂です。 その白い靴というのが、後ろにリボンが着いたとても可愛らしいパンプスで、とても魅力的なのですが実はこの靴………呪われた靴なのです。 元々、この靴は最初からこの店で売られていた物ではなく、ある一人の女性の物でした。 その女性は小百合さんという名前の人でとても美しかったのですが、実家が大変貧しく毎日身を粉にして働いていました。 そんなある日、小百合さんは以前から交際していた男性からプロポーズをされ、結婚が決まったのです。 その男性というのが、さる企業の御曹司で、容姿も家柄もとても優れた人だったそうです。 結婚が決まった小百合さんに、両親は自分達の生活も苦しいというのに、必死に働き一足の白く可愛らしいリボンのついたパンプスを購入してあげました。 小百合さんは泣いて喜び、結婚式の時にこの靴を履くと両親に約束し、毎日靴を眺めながら結婚の日を待ちました。 ところが、結婚式の日………いくら待てども男性は来なかったのです。 小百合さんは心配して、何度も男性に連絡を取ったのですが連絡は取れず、結婚式場のスタッフや男性側の親戚も手伝って連絡を取っ手くれたのですが、連絡は取れませんでした。 結局、結婚式は中止になりその数時間後………ようやく連絡の取れた男性から、小百合さんは婚約破棄を言い渡されたのです。 原因は、男性の浮気でした。 なんと、男性は小百合さんと婚約していたにも関わらず他の女性と浮気し、しかも相手を妊娠させてしまったのです。 その浮気相手というのが、男性の実家と同等の名家で男性の両親は、何と大喜びで浮気相手との結婚を許してしまったのです。 そして最悪なことに、この浮気相手の女性というのがかなり陰湿な性格で、婚約破棄をされて泣く小百合さんをわざわざ見に来て笑っただけならまだしも、小百合さんの貧しい実家を馬鹿にし、両親が身を粉にして働いて買ってくれた大切な白いパンプスを、貧乏人には似合わないと言って奪ったのです。
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