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「なんて言うか………俺、一生答辞とか読む事ないと思うけど、こんなのあったら絶対に読まないと思う」
そう感想を述べる俺に、みつはクスクスと笑う。
あれから、入学式は無事に終わり今は二人少し遠回りをしながら帰宅中である。
「ってか答辞読むとか知らなかったんだけど」
「あら、だってそこまで言う必要ないかなって思ったんですもの」
そうあっけらかんと返すみつに、俺はそうかよと返しながらも答辞を読んでいたみつの姿を思い出す。
あれから、トイレに行きたくて構内をウロウロしていたら、職員達がみつの噂をしていた。
そこで聞いたのが、みつの成績の事だったのだけれど、本当ならばみつは日本でも有数の名門大学に首席で入学していてもおかしくない成績だったらしい。
もしかしたら推薦もあったかもしれないのに、と職員達は話していたけれど、じゃあ何でみつはわざわざランクを下げてまでこの大学に入学したのだろう………?
目の前を歩くみつ、春一番の風が吹けばみつの周りをまるで踊るかのように桜の花びらが舞っていた………。
一つの物語が終わるたびに、日常は進む。
彼女の怪談は、どことなく味を感じた………。
5食目、完食。
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