7食目 百足

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俺の幼なじみであるみつこと、行橋美月は昔からとても美しい少女だった。 美しく聡明で、男子の誰もがみつに恋心を抱いていた。 しかし、そんな美しさがあったからこそ、みつの母親や双子の妹である柚月から妬まれ、またクラスの女子の半数がみつに対して、あまり良い感情を抱いておらず、時に嫌がらせをしたりしていた。 昔、こんな言葉を聞いたことがある。 美しさは罪だ、と………。 そして今、俺は目の前の光景に絶句していた。 それは2限目の授業前の事、たまたまみつと授業が重なり、隣に座りみつが筆箱を開けた瞬間、その中から数匹の百足が出てきたのだ。 周りの生徒からの悲鳴が上がるなか、俺は見てしまった。 数人の女子が、みつを見てニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていたのを………。 入学式の日から、その美しさと聡明さで注目の的になったみつ。 彼女らもまた、そんなみつの美しさに嫉妬して、百足なんて入れたのだろう………。 だけど、だからと言ってもやりすぎだと思い、俺が立ち上がろうとした瞬間、みつは冷静に下敷きにペンを使って百足を乗せると……… 「あら、嫌だ足がすべっちゃったわー」 若干棒読み感があったが、何と百足をニヤニヤ笑っている女子達の下へ、投げ飛ばしたのだ。 上から降り注ぐ百足に、上がる悲鳴………一気に阿鼻叫喚となる教室に、俺は思わず遠い目をしそうになってしまった………。
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