10食目 キーボード

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「夜中に誰もいないのにカタカタ聞こえたら恐怖倍増だよな……… なんていうか、ブラック企業反対って言いたくなる」 相変わらず的はずれな感想を述べる俺を、クスクス笑うみつ。 あれから目を覚ませば、軽く2時間は経っていてその間みつはずっと、パソコンの画面に向かってキーを叩いていたらしい………。 「何かまだ眠い………」 「あら、あんまり寝過ぎると頭痛くなるわよ? 今コーヒー淹れたからこれ飲んで」 はい、とみつに手渡されたコーヒーを飲めば少しずつだけど、ぼんやりした頭が覚醒していく。 その間も、みつはキーボードを叩いていて、その様子がまるでピアノを弾いてるかのようで、ついつい眺めてしまった。 「何か………綺麗だな」 「え?」 「みつがキーボード叩くの、何かピアノ弾いてるみたいっていうか、指綺麗だから様になってるよな」 そう思わず言ってしまった俺に、みつは何いってるの?と苦笑すると、再びパソコンの画面に向き合ってしまった。 だけどその日の夜、風呂上がりにハンドクリームをつけて熱心に手をマッサージするみつを見て、やっぱり可愛いよなぁ………と、ついつい思ってしまったのだった。 一つの物語が終わる度に、日常は進む。 彼女の怪談は、どことなく味を感じた………。 10食目、完食。
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