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いきなりだが、俺の幼馴染のみつこと行橋美月の髪は長い。
まだ俺の隣の家に住んでいた時は、胸くらいの長さだったけれど、あれから成長して切っていないのか今のみつの髪の長さは、腰に届くくらいまである。
それでいてシャンプーのモデルに起用されてもおかしくないくらい、綺麗な髪の毛をしているのだが、何故かみつは髪の毛をくくろうとしない………。
例え食事の時でも、気温が高くても本人は頑なに髪の毛をくくろうとしないのだ。
視線の先、パソコンに向かって真剣な表情でキーボードを叩くみつ。
恐らく内容は怪談だろう、それはいいのだけれど気になるのはやはりみつの長い髪だ。
季節は春が終わり、今日は初夏の陽気と言っていいのかいつもより暑い。
服は夏の服を着ていて、額にはうっすらと汗をかいているのに、みつはやっぱり髪をくくろうとしない………。
「なあ、今日まあまあ暑いけど髪の毛邪魔じゃない?くくんないの?」
そう声をかければ、クルリとイスごとみつが振り返ってこっちを見る。
サラサラと流れる髪は綺麗だけれど、見ていて暑いのでは?と思ってしまう。
「ヘアゴム持ってないから………」
「あれだったら母ちゃんから借りてこようか?母ちゃんなら一個くらいは持ってそうだし」
「ありがとう、でもいいの
私………あまり髪の毛をくくるの好きじゃないから………」
そう自分の髪の毛を触りながら話したみつの顔は、どことなく悲しそうな表情をしていた………。
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