11食目 ヘアゴム

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いきなりだが、俺の幼馴染のみつこと行橋美月の髪は長い。 まだ俺の隣の家に住んでいた時は、胸くらいの長さだったけれど、あれから成長して切っていないのか今のみつの髪の長さは、腰に届くくらいまである。 それでいてシャンプーのモデルに起用されてもおかしくないくらい、綺麗な髪の毛をしているのだが、何故かみつは髪の毛をくくろうとしない………。 例え食事の時でも、気温が高くても本人は頑なに髪の毛をくくろうとしないのだ。 視線の先、パソコンに向かって真剣な表情でキーボードを叩くみつ。 恐らく内容は怪談だろう、それはいいのだけれど気になるのはやはりみつの長い髪だ。 季節は春が終わり、今日は初夏の陽気と言っていいのかいつもより暑い。 服は夏の服を着ていて、額にはうっすらと汗をかいているのに、みつはやっぱり髪をくくろうとしない………。 「なあ、今日まあまあ暑いけど髪の毛邪魔じゃない?くくんないの?」 そう声をかければ、クルリとイスごとみつが振り返ってこっちを見る。 サラサラと流れる髪は綺麗だけれど、見ていて暑いのでは?と思ってしまう。 「ヘアゴム持ってないから………」 「あれだったら母ちゃんから借りてこようか?母ちゃんなら一個くらいは持ってそうだし」 「ありがとう、でもいいの 私………あまり髪の毛をくくるの好きじゃないから………」 そう自分の髪の毛を触りながら話したみつの顔は、どことなく悲しそうな表情をしていた………。
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