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笑って気分がのっているのか、いつになく安祐美も饒舌になる。
「じゃあ、僕からは大事な家族に平和賞を贈る。いつも支えてくれて、ありがとう。酷い言葉で傷つけても、家族の愛情で包んでくれてありがとう。これからは仕事だけでなく、きちんと君たちを見て、君たちの気持ちに応えられるように努力する」
博士の言葉に、安祐美も、里奈も、祐樹も大きく頷き、きっとだよと再び抱き合った。
「さぁ、授賞の後はご馳走を食べなくちゃ。偶然だけど家に用意してあるの」
博士が放り出してあったスーツケースの方へと安祐美が歩き出す。
その後を楽し気に子供たちが追っていく。
愛しい家族の後ろ姿を眺めながら、自分が失ったかもしれない大切な絆を思うと、博士は思わず身を竦ませた。
ーこれからは仕事だけでなくきちんと家族の気持ちに応えられるように努力するー
自分が誓った言葉を忘れず心に留めて、実行しようと博士は思った。
鞄にしのばせてきた「見えない明日を乗り越えて」の続きを今夜読もう。
安祐美がスーツケースを手に振り替える。
その笑顔に博士も笑顔で返しながら、きっと自分の愛読書は、これから先、この一冊になるだろうと予感した。
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