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博士は読んだ。仕事ばかりで、自分に目もくれなくなった恋人に、どうやったら目を向けてもらえるかと悩んだ末、彼の仕事を理解するための本を探しに、本屋で立ち往生をする女性の話を・・。
沢山種類がありすぎて、どれを手に取っても内容が分からず、仕方がないのでその女性は、一番文字が大きな初心者向きの分厚い本を数冊買うのだ。
頭の悪い自分を嘆きながら、必死で一つ一つの単語をパソコンで検索して、それこそカタツムリが這うようなスピードで、一文一文を理解していく。
こんな難しいことを研究しているんだ。やっぱり自分の恋人はすごいんだ。自分に割く時間がないからと言って、寂しがるのは贅沢なんだと思うようにする。
彼が仕事だけに目を向けられるようにと、たまに会うときも、その女性は自分の気持ちを告げることもせず、恋人の研究がうまく行って認められた話や、逆にうまくいかなくて漏れる愚痴を、ただ黙って聞くのだ。
そして、沢山の愛情を込めた言葉を残して帰っていく。
ある日、恋人の話す研究の内容が、本から得た知識と重なった時、彼女は分厚い本を見せて、彼を理解しようと努力していることを自慢してしまうのだ。
研究者はプライドが高い。過去の研究結果を印刷した本は、今自分が研究している内容には追いつかないと説明され、女性は努力ばかりか、自分自身を全否定されたように感じて落ち込んでしまう。
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