第一章 わたしピンクのサウスポー

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被災民の救出態勢さえ整わぬ状況で、事態は、急速に、日米中三国の戦争へ発展するかと思われた。 が、事態は急転直下、収束を迎える。 日米同盟軍出動を知った中国は、唐突に《人道支援活動の完了》を宣言。尖閣諸島と沖縄周辺に展開させた軍を撤収させ、ここに、《沖縄危機》は一応の終結を見た。 戦争の危機を回避した政府は、ようやく、自衛隊を被災地に本格的に投入。長い復興の道のりが始まった。 ――が、国土には、震災の深い傷あとが残り、国民の間には、政府に対する決定的な不信が刻まれた。 そして、深い傷を負ったのは、国土と国民だけではなかった。 震災により、壊滅的打撃を被った日本経済。経営危機に陥った優良企業に対し、アメリカは、史上空前の企業買収を展開し、日本経済を事実上の支配下に置いた。 それは、政治、行政、文化――プロスポーツまでもが、アメリカの影響下に置かれることを意味していた。 プロ野球もまた、外圧に屈し、外国資本の球団買収制限を撤廃。メジャー・リーグによる、日本野球の3A化という事態が、現実のものとなった。 ――これは、そんな時代に咲いた徒花、極東メジャー・リーグの物語である。
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