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「そうね……」
闇の中、閉じたファイルを置く気配がして、烈花が言った。
「ひと思いに殺してもいいんだけど、それじゃ、あんまり勿体ないのでね……」
「勿体ない……?」
「そう、あなたの、健康で綺麗な血がね。――あなた、吸血鬼(ヴァンパイア)って、知ってる?」
その声と同時に、電気が点いて、慣れない目が像を結ぶ。
水晶の目に映ったのは、烈花の、美しい裸体。
大きな胸からくびれた腰を経て、肉付き豊かな臀部へ。そして、長い脚へとボディラインが延びる。
成熟の極みに達した躰は、女である水晶が見ても、息を呑むほどの艶かしさだ。
「ふふっ……。どう?私、きれい……?」
革手袋と長靴以外、何ひとつ身に着けぬ姿で、烈花が吊るされた水晶に歩み寄り、背後からそっと抱きしめる。
「私、女の血が好きなの。特に、あなたみたいな、若くて健康な子の血がね。男の血なんて、脂臭くて飲めたものじゃないわ」
「止めて!私に、触らないでちょうだい!」
「分かってないわね。私たちは、主席直属の保安機関、親衛特務総局。一度逮捕されたら、もう陽の当たる場所には戻れないわ。
――もう、あなたは、私のものなのよ」
「ひっ」
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