第五章 S・O・S!エンジェルス

5/35
前へ
/189ページ
次へ
大柄な肥後もっこすの曹長が、おずおずと口を開いた。 「いちど、横須賀の海軍病院に行かれては……」 「海軍病院?何しに?」 「フェアチャイルド投手のお見舞いに……」 「余計なことは考えなくていいわ、曹長」 「失礼致しました」 苛立たしげな表情を浮かべながら、ヒソカが、ひとり言のように呟いた。 「……ユウキは、集中治療室よ。見舞いに行ったところで、米軍さんに笑われるだけだわ。 こんな時だからこそ、仕事をしなくては……」 「は?」 「いや、何でもないわ」  足もとが崩れてゆくような、不安定な感覚。せめて仕事に打ち込んで、一瞬でもユウキのことを忘れなければ、自分が自分でなくなってしまうような気がする。 「中隊長!」 背後の声に振り返ると、駐車場に戻ったはずの新発田が、小走りに駆けてくるのが見えた。 「どうしたの、三曹?」 「そ、それが……、急に、部長が視察にお出でに……」 「部長が?」 おう、と声がして、新発田の背後から石原が現れた。 「大丈夫かね、大尉。訓練中と聞いたが、安静にしたほうがいいのではないかね」 「前歯が二本、差し歯になっただけです。業務に支障ありません」
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加