第五章 S・O・S!エンジェルス

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「そうですか……」 「それと、もうひとつ」口惜しげに俯くヒソカに、石原が続けた。 「フェアチャイルド監督から電話があってね。伝言を頼まれて来た。君に会いたいので、横須賀のアメリカ海軍病院まで来てくれないか、ということだ。夜でも構わないそうだ」 不安が、きゅっと胸を締め付けるのを抑えながら、ヒソカが応じた。 「分かりました 業務のあとで参ります」 「伝えておこう。――じゃ、私はこれで」 大きな石原の背が、ゆっくりと遠ざかる。 その日、いつもより厳しく中隊の訓練をこなしたあと、シャワーを浴びて、ヒソカは特警本部を後にした。 「この間は、本当にありがとう、大尉」  「いえ……。それより、ユウキの容態は……」 横須賀海軍病院の、長く薄暗い廊下を歩きながら、ヒソカが隣のジェイナスに尋ねた。  「いま、集中治療室だ。医師は、峠を越したと言っている」  「では、助かったのですね?」 「ああ」  ヒソカの顔が、一瞬、ぱっと明るくなった。 「よかった……。あれだけのけがで、よく……」  「君のお蔭だ、大尉」 ジェイナスが、ヒソカの肩を叩く。大きな手から、父親の温もりが伝わってくる。 「前回の襲撃でも撃たれたが、臓器などに異常はなかった。今回は、心臓こそ外したものの、動脈を損傷して、血液の四十五パーセントを失ってしまった。本当に危なかった」 「四十五パーセント……」 ヒソカが、驚きの表情を浮かべた。「確か、人間は、血液の三分の一を失うと死ぬはずでは……」  「ユウキは、人間ではない」  ジェイナスが立ち上がり、窓辺に歩み寄る。そして、しばし沈黙したあと、ヒソカに向かって口を開いた。 「聞かないのかね ユウキが何者か。あの夜、君が見たものは何なのか」  「私にとって、ユウキは警護対象です。彼女が健在であれば、何者であろうと関係ありません」  ジェイナスが振り返った。サングラスの奥の目が、ヒソカを凝視する。  「親しくなりすぎては、お嬢様は守れません。それに、任務と関係のない秘密なら、自分は知ろうと思いません」 「優秀だな、君は。部下に欲しいくらいだ」 頷いて、ジェイナスが続けた。「そのことは、あとで話そう。まずは、集中治療室だ。ユウキを見舞ってやってくれたまえ」
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