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寝台を、ぐるりと輸血器材が取り巻いている。
赤い血を満たした、塩化リンゲルポリマーの袋から、ビニールのパイプが伸び、それが、ユウキの全身へと繋がっていた。
首に 肩に 腕に。胴に 脚に 腿に。それは、悲痛の極みのような姿であり、同時に、無数の光背を負った、聖母像のようでもあった。
「見てくれたまえ、大尉。ユウキは、生きている。それも、急速に回復中なのだ」
ジェイナスの声に、傍らの主治医が頷いた。
「血液を半分近く失ったのに、命を取り留めたのです。それだけではありません。造血機能を含め、常人の何倍もの速さで回復しています。医学の常識を、完全に超えています」
その時、ユウキが、嫌っ、と大きな声を上げた。
「どうした、ユウキ!」
「うなされているのです。意識が回復してきて、何か、夢を見ているのでしょう」
医師の声が合図になったように、ユウキが目を覚ました。ゆっくりと焦点を結ぶ瞳の先に、ジェイナスと――ヒソカの姿があった。
「パパ……それに、ヒソカ……」
「ユウキ……」
「パパ……。私は、いったい……」
「お前は、撃たれたんだ」ジェイナスが、重々しい声で呟いた。
「覚えているかね。復興記念公園でのイベントを。
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