第五章 S・O・S!エンジェルス

9/35
前へ
/189ページ
次へ
寝台を、ぐるりと輸血器材が取り巻いている。 赤い血を満たした、塩化リンゲルポリマーの袋から、ビニールのパイプが伸び、それが、ユウキの全身へと繋がっていた。 首に 肩に 腕に。胴に 脚に 腿に。それは、悲痛の極みのような姿であり、同時に、無数の光背を負った、聖母像のようでもあった。 「見てくれたまえ、大尉。ユウキは、生きている。それも、急速に回復中なのだ」 ジェイナスの声に、傍らの主治医が頷いた。 「血液を半分近く失ったのに、命を取り留めたのです。それだけではありません。造血機能を含め、常人の何倍もの速さで回復しています。医学の常識を、完全に超えています」 その時、ユウキが、嫌っ、と大きな声を上げた。  「どうした、ユウキ!」 「うなされているのです。意識が回復してきて、何か、夢を見ているのでしょう」 医師の声が合図になったように、ユウキが目を覚ました。ゆっくりと焦点を結ぶ瞳の先に、ジェイナスと――ヒソカの姿があった。 「パパ……それに、ヒソカ……」 「ユウキ……」 「パパ……。私は、いったい……」 「お前は、撃たれたんだ」ジェイナスが、重々しい声で呟いた。 「覚えているかね。復興記念公園でのイベントを。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加