第五章 S・O・S!エンジェルス

10/35
前へ
/189ページ
次へ
お前は演壇にいて、何者かに狙撃された」 「狙撃……?」 「心臓は外れたが、動脈が損傷して、大量に出血したんだ。普通の人間なら、とうに死んでいるほどの量だった」 「出血……」 「助かったのは、奇蹟だった」 ユウキが、顔を動かして、周りを見る。 治療室の鏡に映る自分の姿に、ユウキが、しばし沈黙した。重傷による一時的な記憶の混乱です、と、背後で医師が囁いた。 やがて、記憶を取り戻した風情で、ユウキが顔を上げた。そして、あらためてヒソカの顔を見て――大きな声を上げた。 「いったい、どうしたのよ、その顔!?」 「あなたを撃った犯人を、追いかけたんだけどね」 ヒソカが、ばつが悪そうな笑いを浮かべた。「取り逃がしちゃったわ。面目ない」 「狙撃犯にやられたの?」 ユウキが、糸に繋がれた人形のように身を起こす。医師と看護士が制止するが、ユウキは構わず、ベッドの上に起き上がった。 「起きては駄目だ、ユウキ」 「パパ、今日は何日?」 「十三日だ」 「何てこと……。明後日から、パルチサンズとの三連戦じゃない……」 輸血管を引きずりながら、ユウキが、立ち上がろうとする。 「何をするつもりだ」
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加