10人が本棚に入れています
本棚に追加
お前は演壇にいて、何者かに狙撃された」
「狙撃……?」
「心臓は外れたが、動脈が損傷して、大量に出血したんだ。普通の人間なら、とうに死んでいるほどの量だった」
「出血……」
「助かったのは、奇蹟だった」
ユウキが、顔を動かして、周りを見る。
治療室の鏡に映る自分の姿に、ユウキが、しばし沈黙した。重傷による一時的な記憶の混乱です、と、背後で医師が囁いた。
やがて、記憶を取り戻した風情で、ユウキが顔を上げた。そして、あらためてヒソカの顔を見て――大きな声を上げた。
「いったい、どうしたのよ、その顔!?」
「あなたを撃った犯人を、追いかけたんだけどね」
ヒソカが、ばつが悪そうな笑いを浮かべた。「取り逃がしちゃったわ。面目ない」
「狙撃犯にやられたの?」
ユウキが、糸に繋がれた人形のように身を起こす。医師と看護士が制止するが、ユウキは構わず、ベッドの上に起き上がった。
「起きては駄目だ、ユウキ」
「パパ、今日は何日?」
「十三日だ」
「何てこと……。明後日から、パルチサンズとの三連戦じゃない……」
輸血管を引きずりながら、ユウキが、立ち上がろうとする。
「何をするつもりだ」
最初のコメントを投稿しよう!