第一章 わたしピンクのサウスポー

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そこで、一週間も救助を待っていたとなれば、彼女以外に考えられん。本人に間違いないのだな」 「容貌や特徴は、司令部からの情報と完全に一致します」 「動かせそうか?」 「自力では動けません。現在、衛生隊が救出に当たっています」 「負傷しているのか?」 ジェイナスの問いに、下士官が眉を寄せて答えた。 「落ちて来た梁に、下半身を挟まれています。骨折が認められるほか、ウィルス性流感と見られる症状で、衰弱しきっています」 「大統領命令だ。必ず救出せねばならん」 「ああ、見えました。あそこです」 下士官が指差す先を、ジェイナスが凝視する。 根こそぎ流され、かろうじて残った 、家屋の土台。取り除かれた瓦礫の下から、一人の少女が、姿を現した。 兵士たちの敬礼を制し、作業の続行を指示しながら、ジェイナスが、少女の上に屈みこんだ。 「年齢九歳の、日米混血の少女」 ジェイナスが、低い声で呟いた。 「栗いろの髪、切れ長の目という容貌の中で、唯一、紅い瞳という、際立って個性的な特徴が存在する……」 覗き込む少女の紅い瞳は、うつろで、焦点を結んでいない。ジェイナスを認識しているかどうかすら、定かでなかった。 ――傍らに、泥だらけの小さな名札が落ちていた。漢字は分からなかったが、《YUKI YUMEHARA》というローマ字は、ジェイナスにも読むことができた。 「ユウキ・ユメハラ。間違いない、《彼女》だ」
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