第一章 わたしピンクのサウスポー

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いよいよ、『彼女』の登場でしょうか。史上最強のサウスポー、『ニューオーリンズの魔女』がやって来るのでしょうか。 お聞きください。観客席から、彼女を呼ぶ声が――ユウキ・コールが響いております!」 球審ジョー・アルメイダの手が、高々と上がった。 「選手交代。――ピッチャー、ユウキ・夢原・フェアチャイルド!」 西暦二〇三一年。 東アジアは、七カ国がせめぎあう、巨大なパワーゲームの場と化していた アメリカ合衆国。 中華人民共和国。 ロシア連邦。 大韓民国。 政変によって朝鮮半島北部に誕生した新国家、高句麗共和国。 中華民国。 そして――日本。 二〇一六年五月に発生した、日本史上最大規模の地震災害(太平洋大震災)。 太平洋プレートに十メートルものずれを引き起こした、マグニチュード九・八の大地震と、二十メートルの大津波が、関東・東海地方の沿岸地域を、一瞬で壊滅させた。 この震災で、関東から東海・近畿に至る地域で、二十三万八千人が死亡、または行方不明となり、二百八十万人が避難を余儀なくされた。しかしながら、日本が直面した試練は、それだけでは終わらなかった。 《沖縄危機》。全面戦争の危機が、続けて日本を襲ったのだ。
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