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どうやらことを急ぎすぎたようだ。僕は大人しく引き下がった。
だけどやっぱり結局僕は待ち過ぎた。彼女の二十八歳の誕生日。苛々した声で痺れを切らして切り出されてしまった。
「それで。いつになったら二度目のプロポーズ、してくれるの?ずっと待ってるんだけど」
「え、あ。そうか」
僕は焦った。しまった、また間違えた。
「ごめん。今仕事、楽しいみたいだから。せっかくキャリアを積んでるとこに子どもなんかできたらタイミング悪いかなぁと…。もう少し様子を見た方がいいかなって。勝手に思ってて」
彼女はもうこういうのは慣れた、とばかりに大きくため息をついた。
「あのね。そんなこと言ってたら結婚できるタイミングなんかないよ。いつが都合いいかなんて慎重になってたらきっかけを逃しちゃう…。全く、こういう大事なことについては結局わたしが決めるしかないのかな」
「すみません」
抵抗は見せず従順に謝る。誕生日ケーキを載せた小さなテーブル越しに彼女が無理矢理上体を伸ばしてきて両腕で僕を引き寄せた。
「いいよ、もう。潤ってそういう人だって。わたしはちゃんと知ってる。知ってて、好きになったんだもん…」
そして僕と彼女は結婚した。
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