その後 編 君死にたもうことなかれ

2/3
前へ
/44ページ
次へ
 さすがに懐かしい気持ちになった。  日記ページもまだ残っていたので、クリックしてみる。  もう更新は止まっているのかもしれないが、彼女が最後にここに書いたのはどんな記録なのだろう。  ページが開いた。  その文章を見て。  一瞬、何が書いてあるのか分からなかった。  私は激しく混乱した。  Sさんは、ある漫画家さんを熱烈に愛好していた。  その漫画のある登場人物の名前が、私の名前と酷似しているのは前から知っていたのだが。 「今日も○○はかわいいなあ。ところで○○といえば、クナリさんはお元気でしょうか」  何度も見返す。  間違いない。  私のことだ。  いつだ。  この日記はいつ書かれたものなのだ。  最後の記事が、私のことだなんて。  あんな別れ方だったのに。  はるばる来てくれた彼女に、私は会うことすらできなかったのに。  その後は私の方から、一方的にネットをやめてしまったのに。  いい思い出であるわけがないのに。  彼女はいつ、私のことを思い浮かべてくれたのだ。  日記の日付を見る。  その日記が書かれたのは、まさに私がそのネットカフェに入った日の、ほんの二日前だった。  止まっていない。     
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加