エピローグ あなたへ 編

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エピローグ あなたへ 編

 私は基本的に楽天家だと思う。  でも時々、「もう生きていなくてもいいかな」と思うこともある。  いや、正直言うと、けっこう頻繁にある。  それもまた「普通」なのかもしれないが。 「苦痛がなく、楽で、人に迷惑をかけない死に方」を考えたことも、何度もあった。  一度、夜の一時、職場の駐車場で、血が飛び散らないように巨大なゴミ袋を組み合わせてできた繭の中、刺身包丁を首に突き刺そうとしたことがある。  失敗して中途半端な大けがをするのが嫌だったので、硬い喉仏を避けた角度や体勢を吟味しているうちに深夜当番の職員に見つかってしまってことなきを得たのだが、まあ、ああいうことはやるものではない(車の中というのは意外に狭くて、力が入れづらいこともあり、やっても失敗していたかもしれないが、そういう問題でもない)。  今でも「やはり山中で首吊りかな」と足が向きかける時もあるのだが、こういう時に、必ず思い出すことがある。  以前、Sさんに、「私たちがおじいちゃんとおばあちゃんになっても仲良しでいてね」と言われた。  今死んだら、それができなくなっちゃうなあ……思ってしまうのだ。     
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