エピローグ あなたへ 編

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 いや、そんなに気を遣うようなことじゃないだろう……と、私はようやくフォローのボタンを押した。  彼女はけっこうフォロワーが多く、もしかしたら気づかれないかもなあ、とも思った。  その日の夜、私はSNSを開いてみた。  まだ何を書いていいのかよく分からないが、まあ適当に何か書いてみようか、とあれこれ考えながら画面を見る。 「三秒でフォローし返した」  これが私が、SNSで初めてもらったリプライである。 ・  出会って間もない頃、彼女の方が年上ということもあってできるだけ丁寧に接していた私に、Sさんは 「そんなに遠慮ばかりしていると、いつまで経ってもお友達になれないんですよ?」 と言った。  それから私はど厚かましくなったが、それで彼女にとがめられたこともない。  私はいつから、彼女の友達になれたのだろうか。  私は彼女に、何があっても、理想化も幻滅もしないだろう。  彼女が何かの過ちを犯しても、平気な顔で、彼女の肩を持つだろう。  昨日のように今日も会い、明日もあなたとともにいる。  それはとても当たり前の法則で、空気のように透明に私たちを満たしている。  当たり前なのだ。  重力は、波だから。  光は、粒子だから。  音は、振動だから。  時間は、非可逆だから。  熱は、無限に自生しないから。     
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