1.晴天が嫌いだ

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 気分が落ち込んでいる日に限って鬱陶しいほどの晴天だ。ここまで雲一つ無いと、写真にも映えるだろう。しかし私は晴天が嫌いだ。落ち込んでいる気持ちが一層際立つし、晴れていると子どもたちが外で騒ぎ出すし、何よりも肌に優しくない。頬のニキビをそっと撫でながら、低くため息をついた。  荷物が重い。それもそうだ。家にある全ての本をこのボストンバッグに詰めてきたのだ。これだけの量を売ればある程度は生活の足しになるだろうか。小説家を夢見て上京したのは10年前。何度か出版社に持ち込んだがダメ出しに耐えられず、もう持ち込むのはやめてしまった。今はネットで小説を書いているが、評価は芳しくない。
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