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あの、カーネル・なんちゃらのような、真っ白なじいさんの一言が俺の人生を変えてしまった。
〔フサフサの白髪+白いシャツ+白衣=某フライドチキン屋のマスコットじじいもしくは医者〕
この方程式は限りなく正しいのではないだろうか。
「…申し上げにくいのですが、病状は厳しいですね。若い人は、進行が早いですから…。現状から考えると、もってあと三ヶ月です…。もちろん、これはあくまで目安です。一緒に、努力していきましょう。では、早速入院していただいて…」
ひどく冷静な面持ちで死刑宣告をする医者を無視して、俺は立ち上がった。椅子のたてたガタンと言うが、やけに白々しく響く。
「ん?…山崎さん?」
「…すいません。一人で考えさせてください。」
「あっ!山崎さんっ!必ず、必ず戻ってきてくださいよ、山崎さんっ!」
あわてたような医者の声を無視して、俺は歩き続ける。俺は、空っぽだった。空虚だった。
何もかもどうでもよくなって、とりあえずジベタリアンにチャレンジした。おずおずと座った俺だったが、やってみると意外と気持ちがいい。地球が近くて泣けてくる。
どうしてなんだろう。なぜなんだろう。選ばれるのは、俺でなきゃいけなかったのだろうか。
空が遠い。世界が俺を置いて、どこかに行こうとしている気がした。灼熱の太陽からは、わけへだてなく大地に光が降り注いでいる。それなのに、俺にとってだけ、その光は冷たかった。
世界よ、俺は望みすぎたのだろうか。きみの気に障ることをしただろうか。
そんなことないだろう?それなのに、なぜなんだ?
世界よ、なぜきみは俺のものにはならない?
小さくていいんだ、少し暖かければ。多くを望むわけじゃないんだ、せめて生きているだけで。
それなのに、なぜきみは俺を置いていく?
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