濃ゆい人々

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「紫苑。待ちなさい。あなたが二階を案内してあげなきゃ」 「……俺、勉強あるから」 「いつもしてないクセに何言ってんのよ」  僕は叔母さんと紫苑君のやり取りを聞きながら紅茶を一口いただいた。紫苑君はやけにそっけない感じ。いい人っぽいんだけど、これから仲良くできるのかなぁ……と少し不安がよぎる。 「紫苑と、ヨウ君は来月から同じ高校に通うのよ? 仲良くしてやってね?」  叔母さんが僕にお願いしてくる。 「いえ、こちらこそ。あ、……よろしく……ね?」  友達って自然になるようなもんだろうし、こういう始まり方は初体験。握手でいいんだよね? そんな不安を感じながら紫苑君の方に体を向けて伺うように握手を求めた。紫苑君は目を丸くして僕の手を握ると立ち上がった。 「へ?」  ビックリしてると、紫苑君の「立てよ」の声。僕は慌てて、引き上げられるように立った。 「もう、こいつだって疲れてんだ。二階案内してくるよ」  紫苑君はイチゴタルトの乗ったケーキ皿を反対の手で持つと「二階で食うから」と僕を引っ張る。 「あ、え、あ……じゃ、おやすみなさい」  叔母さんと田中さんに挨拶してる最中に紫苑君が言った。 「オヤジ、そのバッグ持ってきてよ」 「お、おう。そうだな」 「あ! 自分でっ!」 「いいから。こっちだよ」  紫苑君は問答無用って感じに僕をグイグイ引っ張った。
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