1279人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
紫苑君に引っ張られるままリビングから出て、玄関の方へもどると左手に階段があった。僕の手を握ったまま、土足でドンドン登って行く紫苑君。
一体どこに玄関があるんだろう。
「えーー。も~。ヨウ君ともっとお喋りしたかったのにぃ~」
残念そうな叔母さんの声がリビングからかすかに聴こえる。階段を登りきるとまた現れる白い玄関ドア。そこでやっと紫苑君が僕の手を放した。白い扉を開くと広々とした玄関フロア。左側にも右側にもシューズ入れがある。
ここで靴を脱げばいいのか。
玄関から真っ直ぐ伸びる廊下の突き当たりにドアが見える。玄関右横には更に上へ続く階段。
家の中に玄関が二つ……。平屋の日本家屋に住んでいた僕には、なんだかとっても不思議な感じだけど、慣れればどうってことなくなるのかな?
紫苑君が僕を振り返り靴を脱ぎながら言った。
「階段は三階に続いているけど、オヤジ達の部屋だから、俺らは使わない」
「あ、うん」
廊下を半分ほど進んで紫苑君が足を止めた。左へ続く廊下がある。
「こっち、トイレと風呂と居間がある」
「うん」
「んで、真っ直ぐ行った突き当たりが俺の部屋。俺の隣がお前の部屋ね」
「う、うん」
紫苑君のうしろについて説明を受けながら部屋の前まで来ると、僕の部屋と言われたドアの奥にもう一つドアがあった。そのドアを見てると、紫苑君が言った。
「そこは留学中のクソ兄貴の部屋。鍵掛かってるから開かないし、中もきっとぐちゃぐちゃで腐ってるから気にすんな」
「く、腐ってるの?」
半笑いで紫苑君に笑いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!