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「陽、ちゃんど切符もった?」
「さきた買ったところだや」
ポケットから切符を取り出し見送りに来てくれた母さんへ見せた。
「新幹線のは?」
「大丈夫」
肩に掛けた旅行バッグのポケットのファスナーを開け、封筒の上をぴらりと捲り切符を見せた。
「なぐさねようにね」
「あのね、もう高校だや?」
「したばって電車のんて乗ったごと数回しがねんだも」
「いくらのんでもけねし」
ファスナーを閉め、肩掛け紐をよいしょっとかけ直す。本気で心配してる母さんに大丈夫と少し笑顔を見せて「行ってくるね」と手を上げた。
「あ。コレ。途中で食ったらいはんでね」
「うん。ありがど」
母さんからの巾着袋を受け取り、ニッコリ笑ってみせると更に風呂敷包みを渡された。
「ん?」
「これ、宗像さんのお宅サお土産。かしっこ渡してけろ?」
「あぁ、うんうん」
それを受け取って、父さんから高校生になったお祝いに買ってもらった腕時計を確認する。
名残惜しいけど、もうそろそろ行かなきゃ。
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