陽side 旅立ち

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「へば、もう電車来てまるはんで行ぐね?」 「向こう着いだら電話しての。ご迷惑かけねようにね」 「はーい。行ってぎます」  思いがけずに増えてしまった荷物。肩から旅行バッグを掛け、左手に巾着袋と切符。さらに右手に風呂敷包み。その風呂敷包みごと母さんへフリフリと左右に振って、改札を抜けた。がらんとしたホームに乗客は僕一人。  夕焼けを背負いながら電車がドンドン大きくなってくる。  僕はもう一度振り返って、改札の向こう側にいる母さんに手を振った。「巾着袋の中身を食べてね」とジェスチャーする母さんへ、「ウンウン」と頷きもう一度手を振った。  プシューッという音と共に開いた扉。電車の中もがらんどう。電車が出発するまで扉の前に立つ。流れる駅と小さくなっていく母さんを見送り、扉から一番近くの四人掛けの席に着いた。前の椅子に荷物をドスンと置き、身軽になった体でゆったりと座る。  窓の外は見慣れた景色。草ぼうぼうと畑、だーっと長くひたすらどこまでも真っ直ぐに続く道路に連なる山々。  どこを見てもさほど変わらない景色を見て、これもしばらくは見納めなんだなって思った。  これから行くところが、実はどんなところか僕は知らない。  とりあえず街まで出るんだと父さんが言ってた。そこからJRに乗り換えて青森駅へ。青森駅から今度は新幹線に乗って三時間半。東京に着いたら叔父さんが車でお迎えに来てくれるらしい。  叔父さんと言っても、会ったのは僕がまだ小さかった頃。まったく記憶には残っていない。
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