陽side 旅立ち

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 僕は地元から一度も出たことがない。修学旅行は東京だったけど、運悪く熱を出してしまって行けなかったからこんな遠出は生まれて初めて。通う高校を受験した日も、 父さんと夜行バスで東京へ出向き、試験だけ受けてそのままとんぼ返りした。もちろん観光もしてないしバスからはタクシーを使い、タクシーに乗ってまたバスで帰ってきた。  だから、母さんが心配するのも無理はないよね。  僕は成績がたまたま良かった。進路を決定しなくてはいけない三者面談の時、先生から「大学進学を考えてるなら地元の高校より都会の高校の方がいい」と勧められた。両親はもちろん、八戸(はちのへ)に住んでる叔父さんと叔母さんもそれがいいと強く勧めてくれた。地元から出るなんて想像もしてなかったから最初はビックリ。でも、八戸の高校ならたしかに地元よりレベルが高い。大学受験には有利だし、選択肢も広がるものね。と前向きに考えてた。叔父さん叔母さんがいるなら寂しくないし。  そう思っていたのになんと、東京の親戚から「おいで!」と声がかかったんだ。八戸よりも更に世界が広がると、呆然としてる僕をよそに周りは盛り上がった。
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