信じられないキミと信じて欲しい僕と

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信じられないキミと信じて欲しい僕と

「はい、その通りです、生徒会長。」 俺は何度めか解らない相槌を打った。 「いや、やっぱり信じられない…」 よく見て欲しい。 「その手に持ったカメラから僕を見てください。  真実がそこにはうつるはずです。」 でもあまり見ないで欲しい… だって恥ずかしいじゃないか。 荒が見えてしまうじゃないか。 「私は…機械にあまり詳しくないんだ。」 「覗くだけでいいんです。それだけで解るはずなんです。」 本当に覗くだけ…覗くだけでいい。 それで全てが解るというのに…。 「この重厚感、首に来る重みとかもう本物としか思えない…」 「違うんですって…  本体はチョコとクリームとスポンジで、レンズは飴なんですってぇ…」 細部まで拘っただけあって、本物と信じて疑わない生徒会長の様子は正直これ以上無いほどに心底嬉しい。 嬉しいが、調理部の僕が作ったカメラを没収するのは勘弁して欲しい。 登山部のカメラが無くなったとか知らないし! 本物にいくら似ていても、それは食べ物なのだ。 生モノなのだ! いくら寒空の下といえど腐ってしまうかもしれない。 もうすぐ卒業する先輩方へのプレゼントだし、後輩にも見せつけて先輩としての威厳も出したいだなんて、ちょっと小者めいたことも考えているのだ。 もう今すぐ返して欲しい。 「ほら、端っことかよく見てくださいよ!  ちゃんと見たら解りますから、本当!」 あぁもうあの角のとことか、だまになってるし、レンズなんて端の方ちょっと気泡入ってるとこあるし、よくみたら色なんかまだらな部分ない!? ああああああああ~ これで自信満々になっていたのが、なんだか恥ずかしくなってきた!! 見ないで! やっぱり見ないでええええ!!
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