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薄気味悪い事実に、僕は心から戦慄すると原稿を机の上から全力で払い落とした。
「何なんだ? この原稿は一体何なんだよ?!」
そうして、靴の上から何度も原稿を踏みつける。
文芸に携わる人間は、本来作者が魂を削って書いた原稿を何よりも大切に、丁重に扱わなくてはいけないが、今はそんな悠長なことは言っていられないのだ。
と、僕の背後で誰も触れていないというのにプリンターがひとりでに印刷を再開する。
「何で、また動いてっ……?!」
僕は慌ててプリンターに駆け寄ると、液晶画面に触れ、ジョブ確認画面を開いた。
そこに表示されていたのは――。
【ドキュメントタイトル 黒い本
ジョブ件数 444件
所要時間 4時間44分】
「444件?! 冗談だろ?! これは短編のコンテストだぞ!」
そこまで叫ぶと僕ははっと我に返る。おかしいのはこのジョブ件数じゃない。そもそも、先程からの僕を取り巻くこの状況がおかしい――異常なのだ。
「くっそ! どうしたらいいんだよ! 止まれ! 止まれっての! こいつ!」
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