黒・黒・黒

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 未だ紙を吐き出し続けるプリンターに、僕は焦りを募らせながら何度もジョブ中止や印刷中止を何度も連打する。  だが、プリンターは一向に止まる気配がない。  全く止まることなく印刷され続ける紙の山。  僕はその1枚を手に取った。  先程同様、僕のことが何か書いてあるのだろうか。  恐怖と、しかしそれを上回る程の文字に携わる者――文芸を愛する者としての好奇心から、僕は震えながらも眼を通す。 「444件?! 冗談だろ?! これは短編のコンテストだぞ!」  そこまで叫ぶと僕ははっと我に返る。おかしいのはこのジョブ件数じゃない。そもそも、先程からの僕を取り巻く状況がおかしい――異常なのだ。 「くっそ! どうしたらいいんだよ! 止まれ! 止まれっての! こいつ!」  それを読んだ僕は心の底から恐怖を覚えると同時に、何処かで強い興味を抱いている自分に気付く。文字狂いの宿命というやつか。 「なんだよ、これ……ついさっきの僕の台詞じゃないか。何で、もう原稿になってるんだよ」  ああ、やはり、この本は人間の常識等軽々と飛び越えた何らかの存在が書いた原稿なのだろうか。
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