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すると、夜のオフィスの静寂を切り裂き、突如鳴り響くピーピーという甲高い機械音。
「な、なんだ?」
僕は一瞬飛び上がると、小走りに少し離れた所にあるプリンターに駆け寄っていく。
そして、プリンター上部に設置されている液晶画面でジョブの状態を確認した。
「なになに、【カミヅマリ】だって? おいおい、なんだよ。しっかりしてくれよ、プリンターちゃん。驚かすなっての」
僕はぼやきながら、液晶画面に表示されているトレイを勢いよく引き出してみる。
その瞬間、トレイの奥から聞こえるビリッという音。恐らく、僕がトレイを引っ張った拍子に、内部に詰まっていた紙が破れてしまったのだろう。
「マジかよ。破れると取りにくくなるし後々面倒なんだよな」
そうこぼしながら、僕は身を屈め、トレイの奥へと手を伸ばす。
すると、何か糸の様に細くてしなやかなものが僕の指先に触れた。
「お? 破れた紙の切れ端か?」
僕はその先端を掴むと、再度破いてしまわない様、細心の注意を払いながらそっと引っ張り出す。
ズルリ――……!
果たして、僕が引きずり出したのは、長い女の黒髪だった。
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