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先程僕が印刷をしようとしていた 短編小説コンテスト用の原稿だった。
(ああ……まさか、カミヅマリ……いや、詰まっていた髪が取れたから、ちゃんと印刷が再開されたのか……? そうすると、はは、もしかしてさっきのは本当に紙詰まりで、あの髪の毛は事務員さんの髪がひょんな拍子に入り込んだものだったのかもな)
目の前で起きた恐ろしい出来事に対して、僕は驚く程稚拙な言い訳をつけながら、印刷された原稿をその手に取る。
そして、エブリスタのホームページでジャンルを確認してみた。
タイトルは『黒い本』。作者は『名無し』という人物で、どうやらジャンルはホラーらしい。
「へぇ、あんな恐ろしい出来事があった後に読む原稿がホラーなんて、中々洒落が利いてるじゃないか」
僕は原稿を手に自席に戻ると、早速目を通し始める。
「しっかし、恋愛が主流のエブリスタでホラーを書いてコンテストに投稿するなんて。中々珍しい人もいるもんだなぁ。特に、このコンテストなんて殆どはエッセイと恋愛なのに」
小さく呟きながら表紙を捲る。
その作品は、この2行から始まっていた。
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