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美しく変わった女の人は、隣の男性と照れくさそうに笑っていた。その笑顔は隣の男性だけではなく、女の美羽でも見惚れてしまうものだった。
シンのメイクには力があった。
「美羽、リップCの970番」
「はい!」
そして美羽は、様々な縁もあり現在シンの下でメイクアシスタントをしている。シンは言わずもがな超有名メイクアップアーティスト。どの業界からも引っ張りだこだ。しかし、今はここ『AGEプロダクション』のお抱えに近い。それは、シンの手癖の悪さにも関係していた。
「美羽、シャドウ。210番」
「はい!」
ごつごつとした大きな先生の手のひらに、指定された番号のシャドウを乗せる。間違えると投げ返されたが、今はほぼ無くなった。
化粧品の品番とモノを一致させることに美羽は苦労していた。けれども、美羽の血のにじむような努力とシンの根気強い指導で、美羽は誰もが認めるアシスタントとして成長した。
「洋子さん、今日も綺麗だよ」
「ありがとう、やっぱり私の好きなブランドは発色がいいわ」
(それ、安価ブランドなんだけどね)
最初に指定された口紅の『C』は、有名ブランドではない。もっと安価でドラッグストアにも売っているものだ。三国洋子が口にしたブランドの化粧品は、本来であれば『CH』と指定される。
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