わたしのせんせい

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 美羽は気になることを都度質問する。しかし、等のシンは、「ああ」だの「そうだね」など……気のない返事のみ。シンの様子に、美羽は自分がなにかしたのかと段々と不安になっていく。いつも笑顔で怒り顕にすることなどないシンが、何の感情も表情に浮かべていない。粛々とメイクが進められていく。美羽は段々と口数が減っていった。  そして、最後にリップを塗る時、シンに顎を持ち上げられる。 「薄く唇を開いて。……そう上手だ」  俯いていた顔を上げられると、シンの顔が思いのほか近くにあった。薄い虹彩に吸い込まれそうな美羽は、耐えきれず目を瞑る。 「青のドレスならば、思い切ってリップの色を濃くするといい。深いボルドー……美羽に良く似合う」  リップブラシが唇の上を滑らかに踊る。時折触れる、シン指先が美羽の心臓を踊らせた。頬をかすめる吐息が、チークで色づいた頬を更に色づかせる。 「……少しつけすぎたね」  気がついた時には、美羽の唇はシンのもので塞がれていた。  美羽の唯一知らない唇だった。
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