わたしのせんせい

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わたしのせんせい

「あ、先生。私、来月の十八日、結婚式なのでおやすみをください」  新色のリップを既存のものと入れ替えている時、何気なしに言った言葉。この一言で私達の関係はかわってしまった。 □□    美羽がこの業界に憧れたのは、ある一人のアーティストのステージを見たからだ。百貨店の特別ステージで、新進気鋭のアーティスト『シン』が行ったメイクアップショー。  その時の興奮を美羽は五年経った今も忘れられずにいた。  ショーの内容は、観客の中からランダムに選んだ一般の女の人を変身させるという如何にも在り来りの物だった。一度見てみたらいいという恩師の勧めもあったが、どうせ代わり映えのしないものだろうと思っていた。  しかし、美羽の考えは一瞬にして覆された。  選ばれた女性は、『シン』の手によって、艶やかかつ清潔感のある、美しい人に変貌した。女性の形の良い瞳を際立たせ、かつやり過ぎない。流行りを追うだけでなく、その人個人に何が似合うかを計算し尽くした絶妙の仕上がりだった。  たかがメイク。されど、メイク。     
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