ぼくのかわいい、でし

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ぼくのかわいい、でし

 有名になって、見返してやりたい。  そうしたら、みんな、どんな顔をするかな。  夜が怖い。夜を知らせるサイレンが街に響き渡る。  サイレンが鳴ると、家に帰らなくてはいけない。恐怖の時間が始まる。 □□    シンは、田舎の名家生まれだった。代々、医師や弁護士など『先生』と呼ばれる職業につく家柄だ。その中でメイクアップアーティストを目指すシンは異質な存在だった。もちろん反対された。家族全員に殴られ、罵倒され、人間として生きていること全てが否定された。家を飛び出して、念願のメイクアップアーティストになれたはいいが、時折、家族の時間を知らせる実家のサイレンが頭の中でガンガンと鳴り響いた。  早く有名になりたいとシンが思ったのは、家族を見返すためだった。有名になって、自分の道が間違っていなかったことをシンは証明したかった。     
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