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声の通りに現れた敵は、ブタの顔と天に反り返った牙を持つ亜人種のオークだ。戦士の証である鎧ではなく、茶色のローブ姿であることから、おそらく非戦闘員だろう。
影は再び跳躍し、今度は天井へ。同時にオークの視線が、影が走ってきた方へ向けられる。そうしてオークは誰も居ぬ光景に首を傾げたのち、氷塊を拾おうとしゃがむ。
その首筋目がけ、影は天井から飛んで前転。ブーツに包まれた踵を振り下ろす。
鈍い音が静寂に響き、オークは絨毯に崩れ落ちた。
音もなく着地した影は、オークのローブ襟を掴むと引っ張る――が、オークは数センチも動かない。
オークは成体になると、優にその体重が百キロを超える。百キロ超えの肉塊を引きずるだけの腕力がないのだ。
ぐっ、ぐっ、と何度か引っ張り、やがて影は吐息混じりに詠唱する。そうして生み出した氷の刃でオークの喉を裂く。
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