君から目が離せない

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 白衣の腕の中の彼女が、無邪気な瞳でサタンを見上げていた。  その唇の端がくすぐったそうな表情を作るように徐々に上がっていく。彼は気まずそうに顔を逸らした。 「ふふふ」  小さな笑い声が上がる。笑い声の方向を見れなくて、サタンは近くにいた男を睨みつけた。 「何もしてないよ、俺は……」  少し幼い顔に苦笑いを浮かべたアポロは両手を上げていた。言われなくてもそんなのは知っている。体が勝手に動いただけだ。ジュリを抱く手に力が入る。 「ジュリ、雷が見たくても外には出るなよ。危ないからな」  アポロを軽く無視して、ジュリを見下ろした。 「うん、分かってるよ」  にこにこしたままの彼女は、そう言ってふふふと笑った。  サタンはその言葉を聞いてようやくジュリを離した。そしてそのままジュリの横に並んで窓の外を見る。 「好きにしてくれ……」  ため息をついたアポロは、すごすごとリビングの奥へと引っ込んでいった。 「メイ……サタンが怖い……」 「また? あんたもいい加減そのヘタレ直しなさいよね」 「メイも俺を苛めるのか……」 「うっさいわね、ほらそこ座んなさいよ」  腑抜けた声を出したアポロは、奥にいたメイにもすげなくされてしょんぼりと席に座った。メイは彼の前に、クッキーを置く。 「……余ってたから、あげるわよ」 「メイの手作り?」 「一応……味は保証しないけど」  一転して笑顔になったアポロはさくさくと音を立ててかぶりついていた。メイはツンとした顔で彼から顔を背けて近くの椅子に座っている。美味しいと言って食べるアポロの方をちらちらと見て顔を赤くしていた。 「ジュリ――雷も止んだし、上に戻ろう」 「……うん」  こいつら見ていられない、と思いサタンはジュリの手を引いて階段の方へ向かった。ジュリは何が面白いのかまだにこにことしていた。  ――めったに見られないジュリの笑顔が見られるなら、たまには雷も良いな。  サタンはひっそりと口元に笑みを浮かべた。
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