それでも隣に居られたら

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 見上げる男の顔は、照れたように横を向いている。その頬はほんのりと赤い。 「辛いときは……俺を頼れよ。他の奴じゃなくて……俺をさ」  メイはその言葉を聞いてぽかんと口を開けた。そんなことを言われるなんて思っていなかった。そして、頬が一気に火照る。  それって――つまり。  彼を特別扱いしても、良いということだろうか。ほかの誰でもなく、彼を。  でも、自分にそんな価値はあるだろうか。こんなにも汚れ切った私は、太陽のような彼の心におこがましくも近づくだけの資格はあるのだろうか。 「……あんたみたいな、ヘタレを頼るなんて無理よ」  逡巡して出た言葉は辛辣なものだった。言ってすぐに後悔する。  傷つけてしまっただろうか。そう思って傍に立つ彼の顔を伺うように見上げると、困ったように笑う紺の瞳がメイを見つめていた。 「そっか……俺じゃ頼りないか」  寂しそうに言って、アポロの手は頭から離れた。当然とはいえ少し残念で、メイがアポロの顔を見上げると、頭を離れた手がむぎゅっとメイの頬を挟んだ。彼の顔は、少し拗ねたように唇がとがっている。 「そんな顔するなよ。俺が頼りないならなんでそんな顔するの?」 「そんな顔って……どんな顔よ」  ぷい、とそっぽを向こうとしたが、頬を挟む手がそれを許さない。結果、メイは視線だけを彼から逸らした。自分がどんな表情をしていたかなんて大体想像が付くが、彼にばれているなんて恥ずかしすぎて考えたくもなかった。 「寂しそうな顔してた。……もしかして俺の勘違いかな。それだったらごめん……」  と言って、彼は頬を挟んでいた手をそっと外してしまった。頬に残る彼の手の温もりが急速に失われていく。アポロの指先が遠ざかっていくのを見ながら、やっぱり離れてしまうのは寂しいとメイは思った。  だけど、それを悟られないように平静なふりをした。今更素直になるなんてメイには無理だった。  ――私の本当の気持ちなんて知らないくせに。そうやってすぐ自信を無くして離れていったりするからあんたはヘタレなのよ。  完全に責任転嫁だと分かっていたが、本当はもっと触っていて欲しかったなんて言えない自分がもどかしくて俯いてしまう。しかし、はっと気づいて顔を上げる。これではさっき平静なふりをしたのが台無しだ。 「そうよ、勘違いなんだから……」
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