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彼は寂しそうに笑うことをやめなかった。そしてメイの隣の席に、向かい合うように座る。
「そうか。でも、お前が何か深く考えて頼らないって言うなら、考えすぎるなよって俺は言いたいよ。だってお前、誰も頼らないだろ」
「っ……」
言葉に詰まった。実際、自分が暗部の仕事をしているからと人から距離を置いて接していることは事実なのだ。当然誰かを頼ることなんてほとんどない。
「……気にしてるのは、仕事のことか?」
驚いて彼の顔を見つめてしまう。この男はヘタレなのにこういうところは察しが良くて嫌だ。
アポロは苦笑いした。
「当たり、かな。お前のことだから、誰かを頼ると弱くなるからとか考えてそうだな」
「……だったら、何なのよ」
次々に当てられるとなんだか悔しくなってしまう。今の自分の顔はさぞかし苦々しげな表情をしているのだろうなとメイは思った。
「そんな睨むなよ。別にさ、弱くなるだけじゃないと思うんだよね、俺は。自分一人だけじゃお前の心は守れないと思うよ。特に、そういう仕事をしてるとさ」
「……」
反論できずに黙ってしまったメイの手を、アポロはおずおずと取った。確かな温度がアポロの手から伝わってくる。心の中がじんわりと温まるような安心感を覚えた。
「だから頼れって言うの」
「うん、……そう。ダメかな」
「……そんなに頼ってほしいなら、そのヘタレ直しなさいよ」
「うーん、努力するよ」
アポロはそう言って苦笑いしながら頭をポリポリと掻いた。
そういうところよ、という言葉は飲み込んだ。今は彼の言葉が嬉しいから。だから黙っていてあげる。
メイは小さく笑って、繋いでいた手に力を込めた。
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