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選別にあてて
「コウちゃん、向こうでも頑張ってね」
「コウちゃんはやめろって、まあ、いっか、久々だし」
改札外。結局、読み終えることのできなかった「旅するあなたに向けて」は、服が入ったスーツケースの中に入れていた。因みに「断捨離は日本人に向いていない」に関しては、一日で読み終わってしまったので、持ってきていなかったが、結局、断捨離の方法が書いてあるわけではなかった。因みにこの本を読むことによって、読み終わるまでの五時間を断ちて、捨て、離してしまった。要するに、五時間もの時間を失って、得たものは単なる、本の中身だった。
そのあとの僕は結局のところ、断捨離の方法について、インターネットで調べ、今さっきまで行ってたことの無意味さを改めて反省したのであった。恥ずかしい話である。
「そうだ、光一にと思って、本を買ったんだけど」と、
また本ですか。ここ何日、何冊の本に出合ったのか、と思ったけれど、案外、二冊だったことを思い出す。
それでも多いって、ほんと、本に触れていなかったんだな。今更、こんなこと思ってもなんだが、一人暮らしした先でも、本を読めば、まだいいか。
「結構、スーツケースパンパンだよな」
まあ、確かに、ちょっと詰めすぎた感はある。
「三冊、買ってきちゃったんだけど、入らないよね」
サイズによると思うが、それはやっぱりかさばるだろう。できれば、一冊ぐらいがいいのだけど。
「じゃあ、今ここに広げるから、一つ選んで」
「はぁ」
そういうと、友人はベンチの上に本を並べた。彼の計らいなんだろうけど、ブックカバーがかけられており、単純に、中身は何の本か、分からないようになっていた。
いや、だったら、正直、何でもいい。判断基準がないわけだし。
「じゃあ、これにするよ」
と真ん中に置かれていた本を手に取った。
「了解、残りの二冊は後で、郵送にして送るね」
「まじかよ」
嵩張るかなと、少し不安になったが、まあいい。そのうち、本棚でも買ってみよう。
「ありがとう」
そうして、もう、電車の到着する一分前になった。
せっかくだし、と思い、電車の中でブックカバーを開けた。
「旅するあなたにむけて」
選別を間違えてしまったようだった。
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