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「……ッフフ、あたしばっかり出てきちゃって。でもいいでしょ? 夢に出てきてあげたの……あなたの大好きなガールフレンドが」
ガールフレンド、と言われて喉がむず痒い気がしたし胸がどっと熱くなるのだった。
「昔は図鑑にボロ負けだったけど今はあたしの勝ち……」
はにかんですり寄ってくる彼女がいじらしい。
無論、嘘ではないから異議を唱えることはできないけれども。
「いまもある? 図鑑」
「もちろん――たぶん本棚の1番下に……」
見て来ようと思って起こしかけた身体をぎゅっと押さえられた。
「いや」
「……そっか」
「昔の恋人を今の恋人の目の前に連れてくるなんて最低よ」
「いや――っ、あのさ、別にそういうふうに思ってなんかいねえけど」
そう言われると確かに自分がしようとしていることが酷いものに思えてきてしまう。
「昔っから不愛想なガキで……人に興味なかったんだ、マジで」
「図鑑が大好きなのも仕方ないよね」
「そうそう。だから恋人だなんて」
「……あの頃のあたしはまだ本当に純粋な『天使』みたいで可愛かったのよ? もったいないことをしたんだからね」
「おれが? んなの知りようがねえだろ。……当時……おまえのことはさ……」
――「好きだ」なんて思ってなかった。たぶん。正直分かんない。
今目の前の彼女の頭をかき抱きながら呟く。
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