0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
鳩レースで無一文になった俺は、身体のパーツを一部現金化するために裏路地へ足を運んだ。表通りのショップでは安く買い叩かれるが、裏路地の店なら高く買い取ってもらえる。まあ、それなりにリスクを負うが、ここには何度もお世話になっているし、仕組みも理解しているつもりだ。
裏路地の深部の潜るほど表通りから溢れる喧騒は遠退き、ネオンもまた同様だった。
時折、何処かで銃声が鳴り響き、誰かの怒鳴り声が聞こえた。俺には関係ない。そう自分に言い聞かせて、大通りの電柱に括り付けたロープを命綱にし深々と潜り続けた。
1時間ほど歩き続け、ようやく裏路地のパーツショップに巡り会えた。
裏路地は常に一定の形を成していないため、お目当てのショップに辿り着くの大変だった。
埃っぽい空気とどこまでも続いていそうな暗闇で店の奥が見えない怪しいショップだったが、これ以上裏路地にいると命綱があるとはいえど、表通りに戻れなくなる可能性もあったので、ここでパーツを売ってしまい現金化しようと思った。
「すいませーん。パーツを売りにきたのだけど」
返事はなかった。
もしかしたら店主が奥の部屋で居眠りしているのかもしれないと思い、勝手の店内へ入り暗闇の奥へ足を運んだ。するとバギンと音が響く。
慌てて右目に仕込んでいる小型のライトで灯りを確保すると、如何にもパーツ屋らしく様々なジャンク品が無造作に棚に飾られていた。床には錆びたネジだったり、もう使えそうもない大小様様々な部品で埋め尽くされており、足の踏み場がなかった。先どの音は、どうやら俺が踏み潰したジャンク品が割れた音だったようで、なにかの外装に使うセラミック製のパーツが足元で割れていた。
価値のわからないものを踏んで壊してしまった俺は、店主に気づかれる前に急いで店を出ようとしたが、遅かった。
【……コワシタネ】
その声を聞いたと同時に、視界が真っ白に染る。過電流による症状だった。その証拠に機械化された身体が全く動かない。
【……ヒサシブリノ、ニク!!】
慣れた頃が最も恐ろしい。そんな当たり前のことを思い出したが、もう手遅れだった。
最初のコメントを投稿しよう!