0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「なんだ、ミユキ。朝ごはん食べないのか?」
慌ててダイニングキッチンにやって来たミユキに対して、父サトルは言った。
「なんで起こしてくれなかったの!?そんな暇ないっ!」
「勝手に部屋に入るなって怒ったのはミユキだろう?起こしに行こうにも、行けないじゃないか」
「それとこれとは話が別でしょっ!もういいっ!」
ミユキは冷蔵庫を開け放して、200ミリリットルの牛乳パックを鞄に突っ込んだ。そしてそのまま、ダイニングキッチンを出て行く。
「いってきますはー?」
サトルの呼び掛けに応える声は、ない。
「やれやれ。反抗期か……」
遠くでドアの閉まる音を聞きながら、コーヒーをすすった。
1DKのアパートの一室に、この親子二人は住んでいた。娘が中学生に上がると同時に、唯一の単独部屋は娘ミユキに譲り渡し、父サトルはダイニングキッチンで生活をしている。いまやミユキは中学三年生。シングルファザーの自分に敵意を抱くのも、無理はない。
「さて、と。俺も仕事に行くか……」
買ってから10年以上経っている椅子が、軋んだ音を出した。
●
最初のコメントを投稿しよう!