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「えと、同級生の指宿隼人くん、です。あれ? 連れてきたことなかったっけ?」
私の記憶は曖昧で、学生時代のことを細かく覚えていない。自信なく言うと、家族の誰もが首を横に振った。
そして、きょとんとしている指宿くんをマジマジ見つめている。
「誰ね? あっちゃんの彼氏け?」
「はあ? ばっ、ばあちゃん、何言ってんの? 指宿くんは別に彼氏とかじゃないし……」
「そいじゃあ、今日はなんしに来たんけ?」
「それは、私がちょっと、おかしなことになって……」
「おかしなこと?」
「あの……」と、指宿くんは真面目な顔で前に出る。「今和泉さんが、高校の近くの漁港の防波堤で倒れてたので声をかけて、連れてきました」
「倒れた!?」
ぎょっとした声を出したのは父だ。
「だ、大丈夫なのか。篤子! 身体が丈夫なだけが取り柄だってのに、どっか悪いとこがあるんじゃ……」
「ない、ないないない。大丈夫。ほら、ぴんぴんしてるし」
「でも、なんかわけの分からないこと言ってるし、テトラ見て泣いてるし、ねぇ」と、首を捻るのは母だ。
「お姉ちゃん、変」
ずばりと、悠里が言った。この人昔から鋭いし、しっかりしてるからな、適当にごまかさないと……。
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