エピローグ

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 ニュース内容は次から次へと変わっていく。  総理大臣は小渕(おぶち)さんだし、渋谷はガングロギャルやヤマンバギャルが厚底で闊歩してるみたいだし、『だんご3兄弟』が大ヒットしてるし、ノストラダムスの大予言な世紀末だし。なんだかいろいろ懐かしい。  最後に天気予報と、鹿児島県民にはかかせない、桜島の灰がどの地域に流れるかの風予報までしっかり見ていたら、「あっちゃん、遅刻!」と、母に急かされた。  ワンワン鳴いて見送ってくれるテトラを撫でて家を飛び出すと、急な坂道を下っていく。  天気は晴れ、すでにセミが鳴き始めていて暑い。青空と海が繋がって見える。  坂道を下り切って指宿枕崎線(いぶすきまくらざきせん)の線路を渡り、国道にぶつかると、一度立ち止まってきょろきょろしてしましまう。 「えっと、通学路通学路……」  同じ制服の生徒の姿はすでにない。だけど、三年間通った道はそう忘れない。 「わー、マジで遅刻かも」  高校生の頃の私の唯一の自慢と言えば、無遅刻無欠勤だったのに。その輝かしい過去を三十二歳の私が変えていいわけがない。  だけど、体力には限界があって、部活にも所属していない、運動からきしな私がいつまでも走り続けられるわけもなかった。
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