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そもそも、どうして三十二歳の私の意識が十七歳の私に移ってしまったのか。
原因を覚えていたはずなのに、今やそれらは記憶の彼方、薄らぼんやりとしか思い出せない。というかぶっちゃっけ覚えてない。思い出そうとすると頭の奥がズキズキするし、思い出すのをやめて現実を受け入れることにした。
そして私は考え直した。
十七歳の頃。
多感だったお年頃、私の学生生活ははっきり言って地味だった。カーストで言えば底辺だったと思う。成績は中の中、運動はできない、帰宅部。クラスの中でひっそりと目立たないように静かにしているだけの存在だった。
だけど、何も憧れなかったわけじゃない。
少女漫画で見るような甘い青春生活を。
転校初日、まるで王子様みたいだと思った指宿くんに、ただ片思いを貫いて話しかけることはおろか、目さえ合わせることがなかった日々を覚えてる。それはそれで、いじましいシャイガールだとは思う。
でも、それじゃ甘い青春生活なんて送れるはずがなかったのだ。
一歩踏み出せば、一言声をかければ、目を合わすことができたら、それだけできっと、何かが変わっていたはずなのに、しなかった私を、私は覚えている。
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