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やり直しだ。
どういう理由でこんな状況に陥っているのかは正直理解できないけど、でも、だったら今の状況を楽しんでしまえばいいのではないか、と、私は考えた。
十七歳のままの私だったらできないこと。
三十二歳の私ならできてしまえるかもしれないこと。
「青春……青春……くふふっ、あまずっぺぇ……」
「篤子ちゃん、何かおもしろいものでもあるの?」
「ふぇ?」
目の前から声をかけられて、我に返った。
今は昼休みで、弁当をつつきながらいつの間にか妄想にふけってしまっていた。危ない危ない、窓の外見ながらにやついているなんて、完全に危ない奴だ。
「あ、と、うん。桜島、今日は噴火しないのかなーと思って」
私が言うと、向かい合わせで弁当をつついていた少女は、つぶらな瞳をぱちくりとさせた。
「桜島? 噴火? しない方がいいよ。灰が流れてきたらやだし」
「そーだねー」
あははと笑ってごまかす私に、少女は小首を傾げた。
同級生の少女の名前は喜入千花という。
こけしを思わせるおかっぱ頭で小さい。身長が145センチしかなないし、顔も、手足も全てが小さい。とにかくありとあらゆるものが小さくてかわいい千花は、私の中学生からの親友だ。
こんなにちんまりしてたっけ? というくらい子供みたいなので、学校で声をかけられた時、思わず撫で繰り回したくなった。
「……なんか、篤子ちゃん、今日、変だね」
「へ? そ、そうかな」
コロッケを頬張っていた私はどきりとした。
「うん。何だろう、雰囲気が、いつもと違うっていうか……、髪型が違うからかな」
「髪型? あー、そう言えば、いつもは三つ編み、してたっけ? なんていうか、イメチェン? こっちの方が簡単だし、動きやすいし」
「……ふぅん」
「指宿くんにも言われたんだけど、変、かな?」
「いぶすきくん?」
千花は初めて知った単語を口にしたような口ぶりだった。
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