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「いったあぁぁ~~~~~~~~」
しかも熱い。やけにごつごつしたコンクリートの地面が焼けたみたいに熱い。何だこれ。どうなってるの? もしかしてここは地獄なの? 腕や脚が焼ける。
「う、わ、今和泉さん、待って。危ないっ!」
ごろごろと転がっていく私の身体を後ろから抱き留めようとしたのだろう。彼の腕が身体に絡みつく。はっとして目を開けると、すぐ真下にあるのは青い水だった。
青い、水?
ごつごつしたコンクリートの絶壁に緩やかな波が当たってちゃぷちゃぷと揺れている。 透明な水の中を小魚が泳ぎ、緑色の草がふよふよと漂っている。すうっと息を吸い込んでみると、懐かしい磯の匂いがした。
「……海?」
海だった。
目の前には穏やかな青い海が広がっていて、少し先までコンクリートが続いている。近くには船が停められていた。
ということは、私がいるのは漁港で、ここは防波堤ということで、ごろごろ転がったあげく、海に落っこちそうになった手前で、どこかの誰か、知らない男が間一髪助けてくれたことになるのだろうが……。
何だろう、違和感。
「ええと……」
自分の身体を見下ろしてみる。
彼の手は私の胴をつかみそこねて、その上の膨らみをつかんでいた。
さらに言えば、私はなぜかセーラー服を着ていて、彼の手の上でリボンが風に揺れていた。普段はつかむことのない、むにゅっとした感触に、彼も不思議に思ったのだろう。しばらくむにゅむにゅ揉んでいた。
きゃあ! とか、ぎゃあ! とか、叫ぶべきなのだろうか。でも、いい歳して、胸をもまれたぐらいで叫ぶほどもう乙女じゃないしな。
「う、うわぁっ!」
実際に叫んだのは彼で、ぱっと手を離された私は今度こそ海に落ちそうになった。
「っと、ととととと」
しかし、落ちずにすんだのは、彼が気づいてとっさに腕を引っ張ったからだ。腕を引かれたまま、私は彼の上に落下する。今度は痛くなかった。尻餅をついた彼だけが「いってぇ~~~~」と、眉根を寄せていた。
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